選挙は、私たちが未来に関わる大切な手段
選挙は、私たちが社会に参加し、自分たちの未来を形づくるための大切な手段です。
どんな社会に生きたいか、どんな制度を残したいか――
その意思を届ける最も直接的な方法が「投票」です。
戦後の日本は、焼け野原からの再スタートでした。
1946年の普通選挙で男女が平等に投票権を手にしたとき、多くの人は「これからは自分たちの意見が政治に届く」と胸を高鳴らせたはずです。
その一票には、復興への期待や平和への願いが込められていました。
しかし近年、選挙への関心は薄れつつあります。
実際、国政選挙も地方選挙も、投票率の低下が深刻な問題となっています。
「なぜ投票率が下がっているのか?」
「それによって、どんな影響が生まれているのか?」
この記事では、戦後から現代までの投票率の変遷と社会の動きをひもときつつ、なぜ有権者が足を遠ざけてしまうのか、掘り下げていきます。
投票率の変化を3つの時代で見る
戦後から現在まで、日本の投票率は社会の変化とともに大きく移り変わってきました。
ここでは、**「戦後〜昭和後期」「平成期」「令和時代」**の3つの時代に分けて、その特徴を振り返ってみましょう。
● 戦後〜昭和後期(1950〜1980年代)
戦後の復興が進み、民主主義が根づきはじめたこの時代、政治は人々の暮らしに直結する存在でした。
「選挙に行くのが当たり前」という空気が社会にあり、1958年の衆議院選挙では【投票率76.99%】という戦後最高の数字を記録。
1980年の選挙でも【74.56%】と高水準が続き、選挙への関心の高さがうかがえます。
当時は、地域社会や家族のつながりも強く、選挙が地域全体のイベントのように受け止められていたことも背景にありました。
● 平成期(1990〜2010年代)
バブル崩壊後の社会の不安や、政治への不信感が広がり始めたこの時代。
1996年には「小選挙区比例代表並立制」が導入され、選挙制度が大きく変わりました。
しかしこの制度改革により、「誰を選べばいいのかわからない」「制度が難しい」と感じる人が増え、政治への距離感が生まれます。
その結果、1996年には【投票率59.65%】と、戦後で初めて60%を下回る事態に。
さらに2014年の総選挙では【52.66%】と、ついに戦後最低を記録しました。
「投票しても何も変わらない」といった無力感が、次第に社会に広がっていったのがこの時代です。
● 令和時代(2020年代〜)
デジタル化が進み、社会のかたちが大きく変わる中、政治と人々との距離も再び問われています。
2021年の衆院選では【55.93%】と、平成後期よりわずかに回復したものの、昭和の高い投票率と比べると依然として低い水準にとどまっています。
働き方の多様化やコロナ禍の影響など、新たな社会課題も加わる中、
「投票しやすい環境づくり」と「政治への関心を育てる取り組み」が今、より強く求められています。
戦後から現在までの投票率の流れ
戦後から現在までの投票率の推移を3つの時代に分けて整理すると、以下のようになります。
時代 | 年 | 投票率 | 備考 |
---|---|---|---|
戦後〜昭和後期 | 1958年 | 76.99% | 戦後最高の投票率。復興期で政治関心が高い時代 |
1980年 | 74.56% | 高投票率が続いた時期 | |
平成初期〜後期 | 1996年 | 59.65% | 小選挙区比例代表並立制の導入 |
2005年 | 59.32% | 60%を下回る低投票率が増加 | |
2014年 | 52.66% | 戦後最低の投票率 | |
令和時代 | 2021年 | 55.93% | わずかに回復 |
投票率が下がる理由とは?
1. 若者の投票率が低い
近年、20代・30代の投票率は40%前後に低迷しています。
これは、仕事や学業、子育てなどで忙殺される中で「投票所へ行く時間がない」という実態もあるからです。
加えて、政治そのものが「難解」で敷居が高く感じられ、ニュースサイトを見ても「自分ごと」として捉えにくいという声も。
若者向けの情報発信が不足しているとも言われ、結果として投票へとつながりにくい状況です。
2. 選挙制度がわかりにくい
小選挙区と比例代表の二層構造──
これは専門用語にもなりがちですが、初めて選挙を経験する人には複雑です。
「小選挙区で候補者名を一つ」「比例代表で政党を一つ」選ぶ二重投票のシステムは、手順に慣れていないと投票用紙の書き方で躊躇してしまうことがあります。
制度を理解しないまま投票所に足を運ぶことへのハードルは、意外に高いのです。
3. 政治への期待感の低下
「投票しても世の中は変わらない」──
こうした無力感は、政治不祥事や政局の混乱、長期にわたる同一政党の支配などから生まれます。
政策が実感できないまま時間だけが過ぎると、政治そのものへの興味が失われ、「自分の一票が意味を持つ」と感じられなくなります。
結果的に、有権者の投票行動は静かにフェードアウトしていきます。

投票率が低いと、どんな影響があるの?
投票率の低下は、有権者の意思が政治に正しく反映されないという問題を引き起こします。
とくに若年層が投票を控えると、その声は政策決定の場で軽視されがちです。
たとえば教育費や奨学金、若年世代の就労支援は予算編成の優先順位で後回しにされることが多く、学びやキャリア形成の機会が制約されてしまいます。
また、社会全体の政治的モチベーションが低下すると、選挙そのものが「面倒な手続き」と捉えられやすくなります。
重要な政治テーマや法案が審議されても、有権者がその意義に気づかないまま採決が進む──
これでは民主主義の健全性が損なわれかねません。
さらに、有権者数の減少は「無投票当選」の増加にもつながり、地域の代表が住民の声を真に反映できない事態を招く恐れがあります。
- 若者の声が政策に反映されにくくなる
- 重要な政策が「静かに」決まり、民主主義が形骸化
- 無投票当選が増え、地域の声が反映されにくくなる

投票率を上げるためにできること
投票率向上に向け、さまざまな対策が進められています。
● 期日前投票の活用
忙しくて当日に投票所へ行けない人のために、期日前投票は大いに役立ちます。
最近では駅前やショッピングモールへの設置が増え、夜間まで利用できる自治体もあります。
事前に日程を組めば、ライフスタイルに合わせて無理なく投票できるようになりました。
期日前投票の利用者は年々増加し、2021年には2,000万人を超えました。
● わかりやすい政治教育・啓発
学校での政治教育を充実させ、社会に出る前に選挙や政治の重要性を学べる機会を増やしています。
高校や大学での「主権者教育」は、政治を「遠い話」から「身近な話」へ変えるきっかけです。
また、模擬選挙を通じて投票の手順を体験したり、SNSを活用し、若者に向けた選挙啓発活動も行われ、若い世代が興味を持ちやすい工夫が進んでいます。
● 地域の“おまけ”キャンペーン
地域よっては、投票済証を見せると商店街で割引になるサービスを実施するなど、投票行動を後押しする取り組みが生まれています。
こうした地域ならではの工夫は、投票所へ足を運ぶ楽しさや付加価値を感じさせる効果があります。
● 将来のインターネット投票
まだ本格導入には至っていませんが、ネット投票は若年層や多忙層のニーズに合致する方法として期待されています。
すでに一部の国家戦略特区では実証実験が計画され、セキュリティ確保や投票の秘密保障など技術的・法制度的な検討が進んでいます。
取り組み | 内容 |
---|---|
期日前投票 | 駅や商業施設などで、夜間にも対応可能な投票所を設置 |
政治教育 | 模擬選挙やSNSを活用した啓発活動で関心を高める |
地域キャンペーン | 投票済証で割引などのサービスを展開し、参加意欲を向上 |
ネット投票の検討 | セキュリティ・法制度の整備を進めながら実証実験中 |
一票には、未来を変える力がある
選挙は単なるイベントではありません。
そこには、社会をつくる力と、将来を選び取る責任が詰まっています。
投票率が低下し続ける今こそ、一票を投じる意味を改めてかみしめてみませんか。
次の選挙であなたが投じる一票は、地域や世代を超えて未来を左右する可能性を秘めています。
どうか「わたしの一票」が社会をよりよくする一歩になると信じ、ぜひ投票所へ足を運んでみてください。
あなたの声を、政治の舞台へ響かせましょう。
