【2025】北海道で広がるクマ出没──最新の動向と法改正から見える課題

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「もう山奥だけの話ではない」

2025年の夏、北海道各地でクマの出没が相次ぎました。

これまで「クマは山奥に生息するもの」という感覚を持っていた方も少なくないでしょう。
しかし現実は変わりつつあります。
住宅地のすぐそば、幹線道路や公園、果ては高速道路にまで姿を現す事例が報告され、クマと人間との距離が縮まっていることを多くの人が実感しています。

道内ではすでに人身被害も発生し、農作物や自動車の被害も後を絶ちません。

こうした状況を受け、9月1日からは改正鳥獣保護管理法が施行され、市街地における「緊急銃猟」が可能となりました。
制度の導入は一つの前進である一方、現場では新たな課題も浮かび上がっています。


出没件数の急増が示すもの

2025年の出没件数は、前年と比べて大幅に増加しました。
7月末時点での警察の集計では、前年より40件以上も多くの通報が寄せられています。
特にオホーツク方面では、前年の倍近くに迫る勢いで件数が増加しました。

札幌市でも状況は深刻です。
市街地に隣接する南区や手稲区では、同じ場所で繰り返し目撃されるケースが確認され、市民の憩いの場である公園や自然歩道が一時閉鎖されるなど、生活に直結する形で影響が出ています。

こうしたデータは、クマの行動が一時的なものではなく、人の生活圏との接触が「新しい常態」になりつつあることを示しています。


相次ぐ出没事例──8月から9月にかけて

直近1か月の事例を振り返ると、被害の広がりを実感せざるを得ません。

9月1日には、愛別町で高速道路上を体長1.5メートルほどのクマが悠然と歩いている姿が目撃されました。
民家からわずか数十メートルの場所での出来事に、住民の不安は高まっています。

8月31日には、砂川市で女性とクマがわずか10メートルの距離で遭遇しました。
同じ日、せたな町では住宅敷地内で1.8メートル級のクマが物置を荒らす姿が確認され、知内町ではビニールハウス内のブドウが食い荒らされました。
小樽市でも休耕地に足跡と食痕が残され、市が箱わなを設置する事態となりました。

8月30日には函館市で市道を横断するクマが確認され、天塩町では国道で車と衝突する事故も発生しています。
札幌市南区の中ノ沢では、牧場跡地で親子グマの目撃が相次ぎました。

さらに遡ると、8月14日には知床・羅臼岳で登山者がクマに襲われ死亡する痛ましい事故も起きています。
観光と自然が密接に共存する地域での事件は、道内外に大きな衝撃を与えました。


豊作でも増える出没──従来の説明を超えて

クマの出没が増える理由として、これまで「山の木の実が不作の年は里に降りてくる」と説明されてきました。
しかし今年の調査では、ドングリやヤマブドウなどは豊作傾向にありました。

それでも出没が増えているのは、人里にある「誘引物」が要因と考えられます。
放置された生ごみや家庭菜園の作物、庭先の果樹、さらにはペットフードまでもがクマを引き寄せているのです。
一度その味を覚えたクマは学習し、繰り返し人の生活圏に現れるようになります。

また、エゾシカの個体数が増えたことも一因です。
シカを追って人里へ近づくクマが増え、結果として人との遭遇リスクも高まっています。


深刻化する人身・物的被害

被害は人間の命や安全だけでなく、暮らしそのものを脅かしています。
農作物では、江差町でスイカ畑が荒らされ、せたな町では住宅の物置が破壊されました。
滝川市や斜里町では車との衝突事故も発生し、農業や交通インフラへの影響が広がっています。

一方で、人身被害はかつて山菜採りや狩猟中といった山中での遭遇が中心でした。
しかし近年は住宅地や生活圏にまで及び、新聞配達員が襲われ命を落とす痛ましい事例も報告されています。


改正法で導入された「緊急銃猟」制度

こうした事態を受け、2025年9月1日からは市街地での緊急銃猟制度が導入されました。
市町村長の判断で、危険と判断されれば速やかに銃による捕獲が可能となります。

しかし課題は少なくありません。
ハンターの高齢化や人数不足は深刻で、安全に発砲できる環境を確保することの難しさも指摘されています。
さらに、過去の裁判例では駆除に関わったハンターが法的責任を問われたケースもあり、現場の担い手は不安を抱えています。

つまり制度は整ったものの、実際に機能させるためには「誰が責任を持ち、どう安全を担保するのか」という課題解決が不可欠です。


世論の分断──「共存か、安全か」

クマ問題は自然保護と人間の安全という二つの価値観をぶつけ合っています。
被害に直面する住民は「なぜもっと早く駆除しないのか」と声を上げる一方、遠方の人々からは「殺すのはかわいそう」「共存できないのか」といった意見も寄せられます。

どちらの意見にも一理ありますが、実際に危険と隣り合わせで暮らしている住民の切実さを無視することはできません。
この価値観の対立こそが、クマ問題の本質を難しくしているのです。


求められる多層的なアプローチ

2025年の状況が教えてくれるのは、単純な「数を減らす」「追い払う」だけでは解決できないということです。

  • 科学的データに基づく個体識別と行動分析
  • 行政・警察・猟友会の連携強化と責任の明確化
  • 市民一人ひとりによる誘引物管理の徹底
  • 感情論を超えた冷静な社会的対話

これらが同時に進まなければ、クマ問題は根本的に解決しません。


おわりに

北海道に暮らす私たちは、クマという野生動物と切り離せない環境に住んでいます。
だからこそ「共存」という理想と「安全」という現実の間で、冷静に、そして多角的に考えていかなければなりません。

改正法は一つのきっかけに過ぎません。
大切なのは、日々の暮らしの中でできる小さな工夫と、地域での協力、そして行政や専門家との連携です。

ヒグマの出没が増える中で、「どうすれば安心して暮らせるのか」「どうすれば自然と共に歩めるのか」。
その問いに向き合うことが、私たちに課せられた重要な課題です。

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